後援会長コラム『くらげ館長釣れずれ日記』

習慣というものは恐ろしいものだ、今朝も二階の窓からカーテンを寄せて外を覗いた、昨夜の雷と稲妻まじりの雨が気になったのだ、今頃にしては相当な降り様だったようだ。

見降ろす庭の先に大きな水溜まりが二つできていた、この分では近くの沢が増水して程よく濁り、良い水具合になっているだろう、敏感でずるがしこいイワナやヤマメが隠れ家から出て活発にえさを追っているはずだ、

20年30年と雨を待ってのイワナ釣りを続けている間に、二階から見る水たまりの大きさで川の水具合が手に取るように分かる様になった、ここ庄内は良いところだと思う、釣りの好きな者にはまるで「この世の極楽浄土」みたいなものだ、海も近いし山もすぐそこだ、いつもの自分だったらあの水溜まりを見たら矢も楯もたまらず畑の隅からミミズを掘って、通いなれた渓流に吹っ跳んでいったはずだ。

都会に住む釣り人から見ればここ庄内は、海にも山にも貴重な魚がみな手の届くところに泳いでいる、しかし今年の自分には釣りに出かける余裕がない、まあ慣れない後援会会長としてうろうろしていると言って方が当たっているかもしれない。

もともと私の50年は魚で通して最後はクラゲで終わった男だ、政治には全く無縁だったそれが今、後援会長を務めているのだから我ながら何とも不思議な感じがする。

4年と半年前の3月、弱冠42歳の若武者に出会ったのが生き方を変えた、たった一人で強敵に立ち向かうその心意気に心を奪われたと言って良いだろう、いわば男が男に惚れたのだ。

私だって42歳のころは燃えるような情熱があった「ただただクロダイの大物を釣りたかった」、近くの竹やぶから掘ってきた自作の4間竿に、あえて中通しにはせずハリス3号を竿先に縛り付けて荒れる磯の先に立ち、沈み岩を越して振り込んで当りを待った、竿の先が引き込まれる僅か一瞬早く竿を立てる、、、、細い庄内竿が手元から曲げられる、竿が折れるか、、糸が切れるか、、、強い引きに耐え切れず思わず「あ、、、、―」っと声が出た、あそこには男を迷わすようなスリルがあった。

挑戦する男の心意気には比べようもないが、今私もあの頃のように心は燃えている。

2021,8,23  会長 村上龍男